2026/10/19 (更新日:2026/10/19)
65歳以上における運動、食生活などの生活の質を上げるには
65〜74歳のフレイル改善指導ガイド
医療・介護従事者向け|運動・栄養・生活支援を組み合わせた実践プラン
今回の対象者は、筋力・歩行能力の低下、疲れやすさ・活動量の低下、体重減少・食欲低下がある方です。
この場合、単に運動を勧めるだけでは不十分です。まず低栄養や病気の有無を確認し、
食事量を確保しながら筋力と日常生活動作(ADL)を回復させることが重要です。
指導の基本方針は、次の3つです。
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栄養改善: 体重減少を止め、筋肉をつくる材料とエネルギーを確保する。
-
運動療法: 下肢筋力、立ち上がり、歩行、バランス能力を改善する。
-
生活支援: 日中の活動量と社会参加を増やし、改善した機能を維持する。
なお、意図しない体重減少や食欲低下が続いている場合は、フレイルと決めつけず、原因疾患の評価を並行して行います。
1. 初回評価:介入前に何を確認するか
最初に、身体機能だけでなく、体重減少の原因、食事摂取量、服薬、生活環境を把握します。
日本老年医学会のフレイル診療ガイドと日本サルコペニア・フレイル学会の資料を、評価の基礎として活用できます。
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評価項目 |
確認・測定方法 |
指導への活用 |
|---|---|---|
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体重・栄養 |
体重推移、BMI、食事摂取量 |
低栄養リスクの把握 |
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筋力 |
握力、椅子立ち上がり |
筋力低下の程度を把握 |
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歩行能力 |
通常歩行速度、TUG |
移動能力・転倒リスクを評価 |
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身体活動 |
外出頻度、歩数、座位時間 |
活動量を増やす目標設定 |
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疲労・活力 |
疲労の出現状況、睡眠、日常生活 |
運動負荷や休息を調整 |
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口腔機能 |
咀嚼、嚥下、義歯、口腔内の状態 |
食事摂取を妨げる要因を確認 |
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併存疾患・薬剤 |
病歴、服薬、疼痛、起立時症状など |
安全な運動・栄養計画を立てる |
実務上のポイント: 初回評価では、体重と食事量を特に重視してください。
筋力低下と体重減少が同時に起きている場合、運動だけを増やすとエネルギー不足が悪化する可能性があります。
医療機関への相談を優先する状況
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意図しない体重減少が続いている
-
食事・水分が十分に摂れない
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新たな強い倦怠感、息切れ、発熱、痛みがある
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めまい、失神、急激な歩行能力の低下がある
-
むせや嚥下困難が目立つ
急な症状や重い症状がある場合は、運動指導より医学的評価を優先します。
2. 栄養指導:体重減少と食欲低下への対応
この対象者では、筋力トレーニングと同じくらい栄養改善が重要です。
栄養介入と運動療法を組み合わせることは、フレイル・サルコペニア対策として推奨されています。
① 目標設定
栄養状態、腎機能、活動量、体格に応じて個別に設定します。
・体重
まずは意図しない体重減少を止める 体重を定期的に測定し、減少傾向が続く場合は摂取量と原因疾患を再評価します。
摂取量の目安を個別に設定する 腎機能などに問題がない場合、適正体重1kgあたり1.0g/日以上を検討する一つの目安にできます。低栄養やサルコペニアがある方では、必要量をさらに検討します。
たんぱく質だけでなく総摂取エネルギーも確保する 食事量が少ない方は、たんぱく質を摂っていてもエネルギー不足によって筋肉の維持が難しくなる場合があります。
たんぱく質量は一律に決めず、腎疾患、肝疾患、心不全などの状態を踏まえて調整します。
② 食欲が低下している方への具体的な工夫
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1回量を減らして回数を増やす: 3食で食べ切れない場合は、間食を活用する。
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少量でも栄養価の高い食品を選ぶ: 卵、魚、豆腐、乳製品などを利用する。
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主食を抜かない: ご飯、パン、麺などでエネルギーを確保する。
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食べやすい形態にする: 軟らかさや一口量を調整し、口腔・嚥下機能も確認する。
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食事環境を整える: 食事介助、配食サービス、家族との共食などを検討する。
③ 指導に使える食事例
ご飯、納豆、卵、みそ汁など。食欲がなければ少量から始めます。
昼食
ご飯、魚や肉、豆腐、野菜の副菜など。食べ切れない場合は量や回数を調整します。
間食
ヨーグルト、牛乳、バナナなど。必要に応じて医療用・介護用の栄養補助食品も検討します。
④ 栄養指導の効果判定
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体重の推移
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食事摂取量の変化
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食欲、疲労感
-
筋力・歩行能力
-
必要に応じて管理栄養士による栄養評価
体重は可能であれば同じ条件で週1回程度確認します。短期間の増減だけで判断せず、数週間単位の傾向を見ます。
3. 運動指導:筋力・歩行能力を改善する
運動プログラムは、レジスタンス運動、バランストレーニング、実際の動作に近い機能的トレーニングを組み合わせる方法が推奨されています。
ただし、体重減少や疲労が強い場合は、医学的評価と栄養状態の確認を先に行い、低負荷から始めます。
初期の運動プログラム例
以下は、医学的に安定し、立位・歩行が安全な方を想定した導入例です。全員に適用できる標準処方ではありません。
A. 椅子からの立ち座り
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5回程度から開始
-
椅子の背後を壁につけ、必要に応じて手すりを使用
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立つ・座る動作をゆっくり行う
膝痛や立ちくらみ、ふらつきがあれば中止・調整します。
B. 座位での膝伸ばし
-
左右それぞれ5〜10回程度
-
膝を無理のない範囲で伸ばす
-
動作中は息を止めない
C. かかとの上げ下げ
-
安定した机や手すりにつかまる
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5〜10回程度から始める
-
かかとをゆっくり上げ下げする
D. 歩行練習
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5分程度など短い時間から
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平坦で安全な場所を選ぶ
-
必要に応じて杖、歩行器、見守りを使う
運動の頻度と負荷の調整
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項目 |
導入時の例 |
|---|---|
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筋力トレーニング |
週2〜3日を目安に、回復日を設ける |
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歩行・有酸素運動 |
短時間から開始し、体調に応じて頻度を増やす |
|
バランス練習 |
安全を確保した状態で実施する |
|
負荷の増やし方 |
回数、時間、抵抗のいずれかを少しずつ増やす |
|
休息 |
疲労や痛みが強く残る場合は負荷を下げる |
指導のコツ: 最初から目標歩数や運動時間を高く設定するよりも、「安全に実施できた」「翌日まで疲労が強く残らなかった」という成功体験を積み重ねます。
筋力が向上してきたら、理学療法士などがフォームや自覚的運動強度を確認し、徐々に負荷を上げます。
胸痛、強い息切れ、めまい、冷汗、動悸などが出現した場合は運動を中止し、症状に応じて速やかに医学的評価を行います。
4. 活動量を増やす指導:疲れやすい方への工夫
疲れやすい方には「もっと歩きましょう」と伝えるだけでなく、生活の中に活動を分散させることが有効です。
生活場面ごとの介入例
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場面 |
具体的な支援 |
|---|---|
|
起床後 |
体調確認、着替え、洗面 |
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食事前後 |
安全な範囲での移動、食後の短い歩行 |
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日中 |
30〜60分程度座ったら、可能な範囲で姿勢を変える・立つ |
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買い物 |
距離や時間を短く設定し、休憩場所を確保する |
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外出 |
家族との散歩、通いの場、趣味活動への参加 |
|
休息 |
活動と休息を交互に配置し、疲労の蓄積を避ける |
厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」では、個人差に応じて活動量を調整し、座りっぱなしを避け、
筋力トレーニングを週2〜3日行うことなどを推奨しています。
ただし、フレイルがあり体重減少や疲労が目立つ方では、一般向けの目標量をそのまま初期目標にしないことが重要です。
5. 医療・介護現場での4〜12週間の支援計画
以下は、初期評価後に医学的に安定していると判断された方に対する、個別調整を前提とした実践例です。
1〜2週
第1段階:安全確保と栄養改善
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体重、食事量、筋力、歩行能力を評価する
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体重減少の原因を確認する
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座位運動や短時間の歩行を導入する
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食事回数や食品の選び方を調整する
評価指標:食事摂取量、体重、疲労、運動後の回復状況
3〜6週
第2段階:筋力・歩行の改善
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立ち座り、膝伸ばし、かかと上げを段階的に増やす
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歩行時間や外出機会を少しずつ増やす
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必要に応じてバランス練習を加える
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食事量が確保できているか再評価する
評価指標:立ち座り回数、歩行速度、TUG、日常活動量
7〜12週
第3段階:生活機能の定着
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安全にできる運動を習慣化する
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買い物、家事、地域活動などの具体的な目標を設定する
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初回評価と比較して改善度を確認する
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維持期の運動・栄養計画を作成する
評価指標:体重推移、歩行能力、筋力、外出頻度、本人の生活目標の達成度
この期間設定は実務上のモデルであり、全員に同じ期間で改善が得られることを保証するものではありません。
低栄養や併存疾患の程度によって、介入期間や進行速度を調整します。
6. 多職種連携で改善効果を高める
フレイルは身体面だけでなく、栄養、口腔、心理、社会環境が関係するため、職種ごとの役割を明確にすると指導が進めやすくなります。
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職種 |
主な役割 |
|---|---|
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医師 |
体重減少や倦怠感の原因疾患の評価、治療方針 |
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看護師 |
全身状態、食事量、体重、服薬状況の確認 |
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管理栄養士 |
栄養評価、食事計画、栄養補助食品の検討 |
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理学療法士 |
筋力・歩行・バランス評価、運動処方 |
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作業療法士 |
家事や身の回りの動作、生活環境の調整 |
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歯科医師・歯科衛生士 |
咀嚼、義歯、口腔機能の評価・支援 |
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薬剤師 |
食欲低下やふらつきなどに関連する薬剤の確認 |
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介護職・ケアマネジャー |
日常の活動支援、食事状況の共有、サービス調整 |
7. 指導効果を確認するチェックリスト
実施状況の確認
0/7 項目
参考資料
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日本老年医学会:フレイル診療ガイド 2018年版
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日本サルコペニア・フレイル学会:フレイル診療ガイド
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厚生労働省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
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厚生労働省 e-ヘルスネット:高齢者の低栄養予防
現場で最も重要なのは、体重減少を放置せず、栄養改善と筋力トレーニングを並行して進めることです。 体重・食事量・歩行能力を定期的に再評価し、その結果に応じて支援内容を調整してください。


















